民事再生、債務整理、自己破産の加藤法律特許事務所著作権その他の知的財産権

法律情報コンテンツ
自己破産・民事再生・債務整理
個人の方法人の方
著作権その他の知的財産権
その他の法律問題

法律相談受付
自己破産・民事再生・債務整理
離婚
その他

インフォメーション
事務所案内
プロフィール
顧問契約案内
リンク集
サイトマップ

自己破産のことなら
加藤法律特許事務所
トップページ

 
東京弁護士会法律研究部無体財産権法部会判例研究より

均等論に関する近時の裁判例講演録

(平成11年5月27日大阪地裁判決を中心として)
 資料(判決公報
  1/5
 1.序論
 それでは始めさせて頂きます。今日は今年5月27日に出ました大阪地裁の判決を題材に、特許侵害について報告致します。特許侵害につきましては平成10年2月24日に最高裁が均等論についての判断基準を示した判決を下しております。それ以降現在まで均等論に関する判決が数件出ております。今日検討する大阪地裁判決もそうです。お手元の参考資料として最高裁判決以降の均等論判決をお配りしました。また大阪地裁判決の事案では間接侵害が問題になっております。そこで今日は大阪地裁判決の検討を中心に致しますが最高裁判決以降の均等論判決及び間接侵害についての主要な判決もみていきたいと思います。


2.特許請求の範囲の記載事項の変遷
 さて、お手元に大阪地裁判決の公報、それから図面 1枚、さらに被告物件についての図面1枚があるかと思います。その中でまず公報を見ていきたいと思います。特許請求の範囲ですが請求項1から始まって請求項7まであります。請求項が沢山あることは通 常なんですが、昔からそうだったというわけでもありません。
 請求項の記載方法についての変遷というのを念のため見ておきたいと思います。レジュメの1頁目、第一、特許請求の範囲の記載事項の変遷の箇所です。まず第一の2のところですが、かつては単項制を採っておりまして特許請求の範囲には一項しか記載できませんでした。しかしそれでは不便で世界の趨勢ともあわないということで昭和50年に改正がなされまして多項制が導入されました。これにより複数の請求項が記載できるようになりましたが、まだ制限が多く、必須要件項と実施態様項のみでした。実施態様項とは本件公報でいいますと例えば請求項2です。このように請求項1に従属してその実施態様を記載したものを指します。しかし実施態様項としてどういう記載が許されるかについて色々議論がありまして運用としてはかなり狭くなされましたので、発明をもっと自由に特許請求の範囲に記載したいという要望が強く、昭和62年に大きな改正がなされまして、同一発明であっても複数の請求項にわけて記載できるという改善多項制が導入されました。さらにこれとは少し観点は違うんですが、別 の発明でも同一機会に出願できることになりました。レジュメにありますが、それまでは1つの特許出願には1つの発明しか記載できませんでした。例外的に一定の密接な関係を有する発明については併合出願を認めておりました。しかし昭和62年の改正により複数の発明であっても技術思想上密接な関係を有する限り、自由に1出願に含めて記載できることとしました。ただ全く無制限というわけではなく密接な関係は必要で、その要件について特許法37条で定めております。講学上これを「出願の単一性」と呼んでおります。特許法37条によると「方法の発明」と「方法の実施に直接使用する機械、器具、装置その他の物の発明」は1出願に含めることができることになっています。 
 そこで公報を見ますと、請求項1から3は方法の発明、4から7は物の発明となっております。例えば請求項1は注射方法、請求項5は注射装置の発明ですが、この2つは別 の発明でして、注射装置としては具体的な構造のものをクレームしつつ、注射方法としてはより一般 的概括的なものをクレームすることは一向に差し支えありません。このことを一応指摘しておきたいと思います。


3.本件発明(装置発明の部分)はどういう発明か
 それでは、本件発明がどういうものであるのかを公報の特許請求の範囲と図面を見ながら考えたいと思います。なお以下、説明の便宜上、図面 を多用しますが、実際には特許請求の範囲は図面の実施例に限定されるわけではありません。
 請求項5から説明しましょう。請求項は1から7までありますが、1から3が注射の方法で4から7が注射器なんですが、まず物から入った方がわかりやすいでしょう。
 請求項5ですが、まず全体の構成ですが、2つの部分に分かれます。上から12行目を見て下さい。「劣化しやすい物質の注射液を調製する装置」とありますね。その前の部分は全部ここを修飾しているわけです。そしてその後ですが、一番最後にまた「設けたことを特徴とする劣化しやすい物質の注射液を調製する装置」とあります。つまりAにおいてBしたことを特徴とするAという構成です。これは割とポピュラーなクレームです。さて大まかな構造がわかったところで最初から読んでいきます。図は第6図を参照して下さい。「注射液の成分が容器内に保持され」ここで「容器」というのは図で言いますと1です。注射液の成分が1の中に保持されているというわけです。次にいきます。「該容器内において、注射液の成分が分離状態で保持されるとともに」ここで図を見ると10が薬剤、11が液。いずれも注射液の成分なんですが8があるために分離していますね。これが「分離状態」です。さらにいきます。「外部からの作用により一緒に混合し且つ溶解させることが出来るように構成されるとともに」。10の薬剤と11の液はこのままではないんでこの2つを混ぜて溶かすわけです。11は液ですから10の薬剤を溶かすわけです。そういうことができるように構成されるということです。具体的にどういう構成かは「外部からの作用により」というほかはここでは明確ではありません。さらに次ですが「前端部が貫通 可能な膜によりシールされ」とあります。ここで第1図を見て欲しいんですが、これは第6図の容器1を取り出したもので、容器の上下が反対ですが構造は同じです。「前端部」というのは第1図でいうと下の端です。その端が膜3で覆われています、シールされています。そしてこの膜に注射針を差し込むわけですからこの膜は「貫通 可能」になっています。さらにいきます。「貫通可能な膜と前側可動壁部材との間のスペース内に注射液の固形成分を収納し」ここまでいきます。第6図に戻りましょう。2と8の間のスペース6に「注射液の固形成分」つまり薬剤10を収納するということです。さらに「且つ前側可動壁部材と後側可動壁部材との間に注射液の液体成分を収納し」ですね。8と9の間つまり7に「注射液の液体成分」つまり液相11を収納するということです。さらに「後側可動壁部材が液体及び前側可動壁部材とともに移動するときに」ここから先は少し後に出てくる「連絡通 路」を修飾しているんですが、図で見ますと「後側可動壁部材9が液体11及び前側可動壁部材8とともに移動するときに」9が上に動くときにそれに押される格好で、11も8も上に動くわけです。クレームに戻りますが「前記液体成分が前記前側可動壁部材を越えて流通 して前記固形成分と混合するための」「連絡通路」つまり液体成分11が8を越えて固形成分10の方に行って混合する、というんですね。11が8をこえて上の方にいくために連絡通 路12があるということです。さらに続けましょう。「連絡通路を形成したパイプ状容器として構成された劣化しやすい物質の注射液を調製する装置において」今説明した連絡通 路を形成したパイプ状容器これが1なんですが1はパイプ状だと言っているんです。そういうパイプ状容器として構成された劣化しやすい、質が低下しやすい物質の注射液を調製する装置において」ここまでが前半です。これ以降が本発明の特徴になります。ここまでのところでは第6図の9を上に押すというのが出てきたわけです。どうやって押すか、その方法は色々あると思うんですが、とにかく1の容器だけでは注射器になりませんから、9を押して薬剤と液を混合するための手段が必要です。その手段、装置に工夫を凝らしたということなんです。クレームに戻ります。続けて「注射液を調製する装置において、注射液の成分を一緒にして混合することが出来るように内部に前記容器を固定することが出来、相互にねじ込み可能な二つの管状部材で構成され」。ここは「管状部材」の前はその構成を規定したものです。ちなみに「管状部材で構成され」はどこに続くかというと一番最後の「容器を包囲するホルダ手段を設けたことを特徴とする劣化しやすい物質の注射液を調製する装置」ですね。「管状部材で構成された容器ホルダ手段を設けた」というのが本発明の注射器の特徴だというわけです。では容器ホルダ手段を構成する管状部材とはどういうものか。クレームに戻りますと「注射液の成分を一緒にして混合することが出来るように」ここまでは問題ないです。次に「内部に前記容器を固定することが出来」とあります。この部分は管状部材にかかりますから、結局、管状部材の内部に容器を固定できる、ということです。その管状部材は少し後に出てきますが、「二つ」あるわけです。第6図でいいますと24が前側管状部材、28が後側管状部材とありますがこれです。24、28の内部に容器1を固定することが出来、ということです。ではどうして固定できるのかというと、図にあるように前側管状部材24にはねじ26が、後側管状部材28にもねじ28が形成されておりまして、この2つのねじがかみ合うことによって管状部材の内部に容器を固定できるわけです。また、後側管状部材28を上に動かしますと2つのねじが噛み合うことによって28は徐々に上に動きます、二つの管状部材は容器を固定できるだけでなくそのように相互にねじ込み可能でもあるわけです。クレームに戻りますと「相互にねじ込み可能な二つの管状部材」とありますが、「相互にねじ込み可能」というのはそういう意味です。次にいきますと、「該管状部材は、相互にねじ込まれた時に」さらに以下続いていきます。これは今述べた「管状部材」をさらに限定しているわけです。「相互にねじ込まれた時に」とは第6図の状態から第7図の状態に至るまでを指しているわけです。「相互にねじ込まれた時に、前記容器の貫通 可能な膜を備えた前端部が注射針で貫通可能に露出され」というのは容器1の前端部つまり一番上で、それは膜3(第1図にあります)を備えていますが、それが注射針で貫通 可能なように露出されるということです。「且つ、容器の後端部において」この後が長いのでここで切ります。「容器の後端部」とは容器1の一番下です。そこにおいて「前記後側可動壁部材が後端部に配置されたピストンによって液体及び前側可動壁部材とともに前方に移動して」。9がピストン30により液体11及び8とともに前方、第6図でいうと上方に移動する、ということです。このへんは請求項5の前半部分で説明したところです。つまり上に移動することはわかっていましたが、どう移動するかはそこでは規定していなかったわけです。ここではより具体的に規定しているわけです。その次の「液体成分を前記連絡通 路を介して固形成分の収納スペースに流入して」も前半に出てきましたが、液体11が連絡通 路12をとおって固形成分10の収納スペース6に流れ込むということです。さらに「振盪や空気の混入を生じることなく固形成分と混合して溶液を調製する」とありますが、まず「固形成分と混合して溶液を調製する」というのは前半部分に出てきたとおりです。ところでこれまで第6図を中心にみてきましたが、これは実施例の一つに過ぎません。第4図も請求項5の実施例です。これまで請求項5の内容をわかりやすくするために図面 にのっとって説明してきましたが、図面はあくまで実施例に過ぎずそれに限定されるわけではありません。請求項の文言の意味には幅がありますのでその解釈が問題になります。
 請求項5の発明の説明の最後としてかかる構成をとる目的は何かということを考えたいと思います。薬剤と液は一旦混ぜてしまうとその後はすぐに注射しないと変質したりしていろいろ問題が生じます。そこで混合はしないで、しかしいつでも混合できる状態に薬剤と液を準備しておく必要があるわけです。そのためには二つのスペースにわけて薬剤と液を入れておくのがいいわけです。そしてこの薬剤と液をどう混合させるかについては色々方法があるわけで請求項5はねじによって押して連絡通 路を通って混合するという装置を開示したわけです。しかしそもそも混合以前の段階としてこれを持ち運んで必要な時に混合し注射できれば非常に便利なわけです。ただ持ち運ぶためには容器が万年筆のカートリッジのような状態でホルダ手段の内部で固定されていれば非常に便利なわけです。この携帯の容易さというのも目的の一つです(この点は明細書の2頁の右の段の30行目から32行目に示唆されています。3頁左段の17行目から22行目も参照して下さい)。また注射液の調製にあたって薬剤の溶解を十分に行うために容器を上下ひっくり返しにする必要が生じますが、その場合はホルダ手段をひっくり返すだけでいいので取り扱いも簡単です。
  
  次のページ

目次へ戻る


Copyright (C) 2000-2008 Sadaharu Kato All Rights Reserved.