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新発想政経研究会(豊島区議小林俊史主催)
経営者イブニングセミナー(豊島区倫理法人会)講演より

自己破産の仕組み

 

1. 序論

 今日は、今年4月から施行される民事再生法を中心にお話しをしたいと思います。実はこれまでは和議法というものがありまして、和議の手続きで会社を再建させようとしていたわけです。ところがこの和議法は手間暇かかる割には効力が弱く使い勝手が悪いということであまり利用されませんでした。そもそも日本は弁護士に依頼して何とかするという伝統がなかった。手形のサイトを延ばしてもらって何とかしのぎ、それでもダメなときは社長が姿を消して終わり。不動産があればそれは競売。きちんと再建していくというのは稀だった。それは弁護士にも裁判所にも法律にも責任があります。
 そういう伝統を断ち切り、もっと公明正大な法的整理の普及を図ろうということで、現在倒産法全体について全面 的に見なおす作業が進んでいます。その中で民事再生法というのがまずできたわけです。
 

 

2.消費者破産について思うこと

 さて民事再生法にいってしまう前に、身近な、いや身近ではないかもしれませんが、破産のイメージを掴んでいただくために、最近増えている消費者破産について少し話しましょう。資料として「任意整理の手順」「自己破産の手順」というのを配りました。後で簡単に触れます。これまで数多くの消費者破産をやってきて思うことは、どうも日本人は生真面 目すぎるんですね。サラ金などは法外な金利をとっているわけです。ですから業者の請求通 りに払うと、ほとんどが金利の支払いに回ってしまい元本は一向に減らないんです。そのうち支払いが苦しくなってまたよそのサラ金で借りる。しかし実は利息制限法で最高利息は決まっているわけですから、多くの場合18%ですが、サラ金はとりすぎているわけですよ。だからそんな律儀に払い続ける必要はない。でも借りている立場になるとそれができない。払いが遅れ始めるとガンガン請求がきて精神的にもパンクしてしまうわけです。ですからあまり自分で何とかしようとしないほうがいい。知り合いからも借り、そのうち日払いのサラ金にも手を出し、本当に何とかしようとするんですね。でも、払わなくたって、財産がない場合はサラ金もどうしようもないわけです。少し厄介なのは財産がある場合です。あときちんとした保証人がいる場合。きちんとした保証人、典型的には堅い職業の人がいるとそちらに請求がいきます。また、財産がある場合の典型は住宅ローン破産ですね。住宅があるわけですが、住宅には抵当がついていますから、銀行などは競売してしまうこともできるわけです。そうなると持ち家がなくなる。それは困る、という人も多いんですが、実際はそう簡単に競売はしてきません。とにかく東京地裁で一番外来の人が多いのが民事20部すなわち破産部です。そしてとにかくどんどん破産を認めていく、というのが現在の裁判所の運用です。
 

 

3.払わないとどうなる?

 そこで先ほどの「任意整理の手順」にいきますが、弁護士に頼むとして、じゃあ一体どうなっていくんだろうという疑問があるわけです。もっと大事なのは、いくらかかるのかということ。だから頼まない。その点についてはストーリーはこうです。払わないと電話がかかってくる、そして督促状、そのうちに業者が家まで来る、それは困る、というとサラ金大手は、じゃ公正証書にして下さい、ということになる。公正証書にしてしまうと、払わなければ即強制執行ができてしまうんです。で、公正証書も作らないとなると、簡裁に訴訟を起こしてきます。簡裁ですとサラ金の平社員が法廷に立てますから、午前中などは法廷が大混雑です。そして業者の狙いは、裁判所からの呼出状の威力を借りて、債務者を裁判所に引っ張り出す、そうすれば裁判官の手前、債務者は大体和解に応じるんですね。そして、裁判所での和解も、払わなければ即強制執行ができますので、業者にとっては都合がいい。ちなみに強制執行できると言いましても、実際強制執行なんてまずやりません。やるぞと脅して払わせる、ということです。こういう業者の手口に対する対抗手段は1から下に書いたとおりです…また一括で払うなら数分の1でいい、というのが相場です。2に「介入通 知」というのがありますが、これは以後、弁護士が窓口になる、直接本人に行くなという通 知です。これで本人への催促は実際止まります。そしてこの精神的恐怖というか圧迫からの解放というのが一番大きいんです。そして今度は弁護士の方に電話がくるようになります。業者との交渉によって減額、分割払いにします。ただどこまで支払いが続くか、これは別 問題ですね。ここまでが「任意整理」。
 

 

4.自己破産のストーリー

 次に「自己破産」にいきますが、これは要するにチャラにしてくれ、というものです。それを免責といいますが、免責までいかなくては破産する意味がありません。いやーもう払えないという場合でも、自己破産したがる人と絶対嫌だという人といるようです。絶対嫌という人は、自己破産すると不利益があると思い込んでいるケースが多い。確かに自己破産すると、しばらく借金するのは難しくなりますが、それ以外クビになるとかそんなことはありません。正確にいうと、会社の役員等にはなれなくなるんですが、これも免責決定になれば解除です。そして最近の裁判所の運用では、すぐに免責決定になりますから、こういう資格制限というのもないのも同然です。自己破産の手順としては、もう払えない、破産だという宣告を裁判所が審査のうえ行います。そのうえで債務者の債務を免除するか、免責するかを裁判所が審査のうえ決めるわけです。基本はそうなんですが、大きな分かれ目としては管財人がついてしまうかどうかですね。管財人が付かないと早く安く終わる、付くと時間も費用もかかる。破産する側からいえば、財産が全くないことをアピールするわけです。全くないんだから管財人をつけて財産を調査することが無意味だ、というわけです。この場合は、破産宣告だけで終わります。管財人がつくとやはり管財人の報酬を破産者で負担することになる。ここまでが一応会社ではなく個人の話です。
 

 

5.会社の自己破産

 さてここ数年でも色々な会社がつぶれました。ただ、その中には、自己破産もあれば和議もあり会社更生法の申請もあったわけです。そのうち自己破産は会社がなくなってしまう場合です。会社の全財産を処分して現金に換え、税金や退職金を払い、配当があれば配当してそれで消滅です。バブル崩壊後の不況で、会社の自己破産は増えました。ただ昨年あたりから信用保証協会の特別 融資で破産件数は減っています。破産の流れとしては「法人の自己破産の手順」に書いたとおりです。自分自身、破産管財人をやっていて思うのはこれは一種のリサイクルだな、ということです。当然そういうリサイクルを商売にしようという業者もいます。破産管財人になると官報に載るんですが、載ってから数日でそういう業者さんからのDMが沢山きます。破産すると従業員は失業し路頭に迷う、というイメージがありますが、実際はそういうことはあまりないと思います。たとえば、破産物件のなかでも人、物のまとまりとして価値のあるものは、同業者が買っていきます。機械と図面 と従業員を一括して引き取る、という具合に。これが営業譲渡ですね。こういうのは事前に話がついていることもある。まあ、破産の裏側は色々あります。自己破産の費用は弁護士に100−200万、裁判所に200万くらいでしょうか。
 

 

6.民事再生について

 さて、今のは営業譲渡して残りはなくしてしまう場合ですが、そうではなく何とか資産を金に代えて負債については払える限度で折り合ってもらって再建していこうというのが民事再生です。これが今日のメインですが前置きが非常に長くなりました。民事再生の流れについては「法人の民事再生」のところに書いてあります。まず申立てます。どういう場合に申立てができるか、というと、破産原因が生じるおそれがある場合、すなわち支払いができなくなるおそれがある場合であればOKとして、間口を広げました。それを裁判所が審査しまして、確かに申立てできるる場合だとなると開始決定になります。ただ申立てから開始決定までに若干時間があります。この時期は債権者からの強引な回収が頻発するので、何ら手をうたないと財産がなくなってしまいます。そこで、裁判所は債務者の財産につき、仮差押をしたり、処分禁止の仮処分、債権者に対する弁済禁止の仮処分を命じることができます。また、抵当権等の実行による競売の中止を命じることもできます。また、強制執行の中止を命じることもできます。場合によっては強制執行の取消を命じることもできます。これらは個別 に中止を命じる場合ですが、全国に財産が散らばっているような場合は、包括的に中止を命じることもできます。そしてこういった保全処分と併行して、裁判所が監督命令を出すのが原則です。裁判所が監督委員を選任し、監督委員の同意を必要とする行為を指定するわけです。具体的には借金や財産処分です。民事再生ではあくまで債務者が財産を管理し処分するので、それを監督しようというわけです。開始決定があると、もう強制執行はできなくなります。それから債務者が財産目録などを作成して裁判所に提出します。一方債権者は裁判所に債権届を出します。それに対し債務者が債権を認め、あるいは異議を述べる。債権届出期間内に届出をしないと、債権は消滅してしまいます。ですから債権者は届出を忘れないよう注意が必要です。但し、債務者が自発的に債権を認めた場合や届け出なかったことがやむをえない場合は例外です。債務者が認め、しかも他の債権者から異議が出なかった債権は確定します。なお、抵当権付きの債権は、抵当権でカバーできない範囲だけが民事再生により処理されます。カバーされる部分は民事再生と関係なく行使できます。なお、抵当権の実行は、中止命令が出された場合以外は禁止されませんが、一定の場合には担保権消滅請求が認められています。また、営業譲渡による現金化も簡易に行うことができます。
 債権確定が終わった段階で、債務者が再生計画案、たとえば債権を2割カットするとか1年間返済を猶予するとか、を作成して裁判所に提出します。再生計画案の内容はケースによって色々だと思いますが、自己破産したときより債権者に不利になるような内容は許させません。この案を債権者集会にかけて多数決で可決し、裁判所もOKであれば案は確定し、あとは債務者がきちんと実行していく。そんなあてにならないじゃないかという意見もあると思います。そこで監督委員がいる場合、原則いるんですが、監督委員がきちんと監督します。再生計画認可から3年間はそういうふうに監督して3年後に再生手続終了とします。3年たつ前に全部終わってしまえばその時点で終わりです。また、裁判所は債務者に担保を提供させることもできます。なお、再生計画案の中で一旦減資することもできます。大体そんな流れです。債権者が同意すれば債権確定や債権者集会などは省くこともできます。

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