「任意整理」とは法律上の用語ではなく厳密な定義があるわけではありませんが、多重債務などの借金(債務)を減免(整理)するための1つの方法で、裁判所の関与なしにローン業者と借主の任意の話し合いで整理することといっていいでしょう。
自己破産とは俗に負債をチャラにすることと言われますが、「裁判所」という公的機関が「免責」許可決定を下してはじめてそのような効果が生じるのです。免責許可になるための条件は破産法という法律で決められており、当事者で勝手に決めることはできません。しかも、「免責」は破産手続きを経てはじめて許可されるのであり、免責だけが独立しているわけではありません。すなわち、免責が許可される反面、借主に資産があれば換価処分されます。これに対し、任意整理は借主の資産にタッチするものではなく、自己破産とは全く異なるものです。
個人再生には、借主が返済案を作ってローン業者に提示しローン業者の意見を聞くというプロセスがあります。この点は任意整理と似ているといえます。しかしやはり両者は決定的に異なります。第1に、個人再生はあくまで裁判所を通した手続きです。その手順は民事再生法という法律で細かく決められています。ローン業者と借主の間で話し合えばよいというわけにはいきません。第2に、任意整理は個別の話し合いです。従って、話し合いがまとまったローン業者との間では任意整理が成立し返済していけばいいのですが、話し合いがまとまらないローン業者との間では立ち往生することになります。これに対し、個人再生は裁判所による一律の決定です。しかも、個人再生の場合、ローン業者の意見を聞くとはいっても、その意見はローン業者の多数決で決まるので、ローン業者は自分が反対している返済案に従わざるをえない場合があります(任意整理ではこのようなことはありえまん)。第3に、個人再生の場合、返済案の内容は法律で大枠が決められており、ローン業者と借主が合意すればどのような返済も可能というわけではありません。
特定調停とはローン業者と借主が簡易裁判所で返済について話し合うものです。話し合いがまとまらなければ特定調停は成立しません。この点は任意整理と同じです。しかし、特定調停も簡易「裁判所」が関与することに変わりはなく、ローン業者と借主の間の話し合いだけで行われる任意整理にはない制約がある反面、強制執行中止などの一定の法的効果も認められています。やはり両者は異なるわけです。
以上、任意整理とその他の債務整理の方法を対比しました。その結果、任意整理を活用すべきケース、それ以外の方法を選択すべきケースがあることがうかがえます。借主の立場からいえば、自己破産、個人再生でいけるのであればその方が有利とは一応いえます。なぜなら、自己破産には「免責」という強力な効果があり、個人再生でも、一部ローン業者の反対を押し切って借主に有利な返済案を決めることができるからです。ただ、自己破産、個人再生には資産売却など借主に負担を強いることもあり、また、返済案の内容などにつき様々な制約があります。そういった負担を避け、制約なく当事者間で柔軟に決めたい、あるいは決めざるをえないときは任意整理を活用すべきでしょう。